家庭料理についてのあれこれ

はじめに

知識は即ち武器である。エビデンスのある情報を選別し身につけることで、自分も周りも守ることができる。
理解に合わせて、できそうなことからやってみよう。

☆やったことがないと難しく考えてしまうかもしれないが、実際にやれば簡単とわかるはず。楽しんで料理しよう。

心得

安全を軽んじてはいけない

食中毒を防ぐために正しい知識を持つ
生肉、生魚

⚠️生肉を扱ったまな板でそのまま生食する野菜を切ることは禁忌
可能ならまな板は2枚用意し使い分けること。難しければ表裏を使い分けるか、野菜を全て処理した後に肉を切り、都度熱湯消毒する。

⚠️鶏肉と豚肉は生焼けも禁止。牛肉についてのみ、トリミングした表面と臓器にしか原因菌は存在しないため、臓物以外は表面を焼けば基本的に大丈夫。
アニサキスは酢や醤油やわさびで死滅することはない。一定条件下での凍結を行えば、生のまま安全に食べられる。 関連して、鳥刺しが出てきても食べてはいけない。 カンピロバクターはギランバレー症候群の原因となる。断ると「新鮮だから大丈夫」と言われると思うが、微好気性細菌のため新鮮な方が危ない。
例外的に九州では解体の基準等が他の地域と全然違うため、食中毒になる人は少ないそう。鳥刺しを食べるなら九州で。

手に怪我をした時は

怪我した瞬間は血液の混入に注意。時間が少し経っていたり化膿している傷は、黄色ブドウ球菌が繁殖していることがある。毒素は少しの加熱では分解されないため、手袋等で傷を防護することが大切となる。肉を捏ねる際は傷口にとっても良くない。おにぎりを握る時なども、ラップ越しが安全である。

アレルギーは事前に確認する

ものによってはアナフィラキシーショックを起こすし、程度次第でコンタミレベルでも死に直結することを知る。

粉類は冷蔵庫で保管する

小麦粉やココアやプロテインはとにかくダニや虫がわきやすい。ダニは簡単にアナフィラキシーショックを引き起こす。常温では完全にリスクを排除することは難しいため、入れ替えが相当激しくない限りは冷蔵庫で。
粉ではないが、精製された白い砂糖は脱水作用が強いので密閉すれば常温OK。なめくじに塩をかけると死ぬのと同じ理屈で、害虫の繁殖が難しいため。

食べる人のことを考える

食材の選定

基本的には新鮮なものを。期限は切らさないように管理する。味醂風調味料は風味が劣るため、基本的には使わない方がいい。

相手に合わせた味付け

辛み、塩分濃度等に注意。エスニックなどの特殊なスパイス、パクチーなどの香草も様子を見たり好みを把握した上で出す。出されたもの、特にメイン料理を食べられないと可哀想。

栄養面

あまりにも栄養の偏るものを連日出してはいけない。基本的には1週間単位で帳尻を合わせる。

調理器具について

揃えたいもの

太字は最低限必要なもの。他は必要に応じてゆっくり揃えれば良い。あくまで一例なので参考程度に。

  • まな板
  • 牛刀または三徳包丁(金属製)
  • ダイヤモンドシャープナー
  • ピーラー(安物禁止。貝印等を選ぶこと)
  • 菜箸
  • 大泡立て器(ワイヤーがある程度多いもの)
  • 小泡立て器(ドレッシング用として売っている)
  • ニスがけ木べら
  • 色の濃いゴムべら(スパチュラ)
  • 金属製レードル(おたま)
  • プラスチック製レードル
  • プラスチック製ターナー(フライ返し)
  • マッシャー
  • しゃもじ
  • 炊飯器
  • 電子レンジ(オーブン機能付きなら尚可)
  • トースター
  • 冷凍室つきの冷蔵庫(できれば300ℓ以上)
  • テフロン加工フライパン20cm
  • テフロン加工フライパン27cm
  • テフロン加工深型フライパン27-30cm
  • 窓付きのフライパン蓋(20cm用と大きいもの用)
  • 片手鍋(アルミ製は腐食するためお勧めしない)
  • 厚手の大きい蓋付鍋
  • 土鍋
  • 計量カップ、計量スプーン
  • 電子キッチンスケール(はかり)
  • 大トング(先が樹脂製のもの)
  • 少トング(ステンレスでもOK)
  • 金属製バット数枚
  • キッチン鋏
  • おろし金
  • 大ガラスボウル(扱いが難しければ、買い替え前提でしっかりとしたプラ製のものでも可)
  • 大中小ステンレスボウル
  • ステンレスざる
  • ステンレス粉ふるい(単純な構造のもの)
  • スライサー
  • 栓抜き
  • 缶切り
  • 保存容器大小各種
  • 裏漉し器
  • ハンドブレンダーやミキサー
  • ぶんぶんチョッパー(フードプロセッサー可)
  • 取り分けスプーン
  • 卵焼き用フライパン
  • 寸胴鍋
  • 無水調理鍋
  • 砂糖・塩入れ
  • 蒸し器
  • オイルポット
  • 鍋つかみ
  • 鍋敷き
  • 水切り籠

    初めに揃えるものの一例
    調理器具には最低限の投資をする
    基本的には安かろう悪かろうと考えること。安易にチープなプラスチック製や100円ショップの商品を選ぶと使い辛い上最終的に高くつくため、買う時は即捨てる羽目になる覚悟をしておく。量販店やスーパーマーケットならそこまで高額でなく必要十分なものが揃う。 だが全て百貨店で選ぶなど、必要以上に資金を投入する必要性はない。
    例外的に100円ショップで済ませて良いもの
  • 計量カップ
  • 計量スプーン
  • 菜箸
  • ドレッシング用泡立て器
  • 茶漉し、味噌漉し
  • 卵の穴あけ器
  • 鍋つかみ
  • 鍋敷き
  • 缶切り、ワインオープナー
  • スライサーを使う時の手指ガード

実践編

一汁一菜でいいという概念を持つ(土井善晴先生による)

毎日料理する場合は特に。 見栄えより大切なものがある。美味しくて栄養が取れたらそれで十分。副菜なんてものは毎日義務的に出さなくても良い。個人的には汁物も具によってはなくたっていい。

楽する方法を知る

  • 時間のある時に常備菜を作り冷蔵庫に数日分ストックする
  • 鶏そぼろやドライカレーなどは冷凍できる
  • 肉を冷凍するときは使いやすい重量ごとに分けておく
  • 疲れたり忙しいときは解凍して焼くだけで済ませられるように、下味をつけ処理した上で冷凍したり、または味付け肉を購入し冷凍しておく。
  • 解凍は基本は12時間以上前に冷凍室から冷蔵室に移してゆっくりと。優先順位は、冷蔵庫解凍>氷水解凍>流水解凍>レンジ解凍。後ろに行くほど早く解けるが味はどんどん落ちる。常温解凍は細菌が繁殖するためNG。
  • 簡単に作れるレシピを控えておく。
  • 冷凍食品やスーパーの惣菜だって立派な食べ物であると心得る。
  • 炊いた白米は余ったら冷凍しておく。冷蔵では澱粉がβ化して極端に味が落ちるし、すぐに固くなる。
  • いつも使う鍋の容量を大体覚えておく。例えば2人分の汁物を作る時の水位はここまでだな、とわかっていると作業時間の削減になる。

    信頼できるレシピを選ぶ

    基本的には料理本を購入する
    はじめの一冊におすすめなのはイチバン親切な料理の教科書
    追加で手堅く選ぶなら「きょうの料理」くらべて選べるわが家の味※新品の紙媒体はほぼないが、電子ならまだ買えるはず。
    dancyuは質は高いがレベルも高いので段階を踏んでから。
    料理研究家ごとの味の傾向を掴む

    ⚠️ネットでバズるレシピばかり繰り返し発表しているタイプのインフルエンサー料理研究家を信用しすぎてはならない。
    個人的な推しは以下、敬称略。

  • 野口日出子
  • 栗原はるみ
  • 小林カツ代
  • コウケンテツ
  • 山本ゆり
    インターネット上のレシピの選び方

    インターネットのレシピは玉石混合だと心得る。cookpadなどで素人のレシピを参考にするのは、料理が出来るようになってから。お菓子系については上手くなってからも厳禁。 思い浮かぶ中で失敗の少ないものは以下の通り。結局はプロの料理研究家の監修のあるものに限られることがわかる。

  • きょうの料理」等、NHK番組のレシピ
  • 調味料メーカーのレシピ
  • サントリーやアサヒ等、大手のアルコール類を製造している企業のレシピ
  • その他企業のレシピ
  • 白ごはん.com
  • 三越伊勢丹FOODIE
  • レタスクラブ
  • オレンジページ
  • LEE

    「適当」は経験を積んでから

    火加減はノリではなく定義通りに。調味料は毎回計る。毎回やっていれば、適当でいい部分と厳密にやるべき部分がわかってくる。最初は必ず定石を踏むこと。

    応用編

    レパートリーの増やし方

    外食する
    食べてみて、これは何を使っているのか、どういう味付けなのかを考える。定食屋や町中華、安価でいいので洋食屋等はかなり役に立つ。 ただし、握り寿司・天ぷら・うなぎ・高級フレンチ等、職人が作る料理は素人には再現がかなり難しく、ラーメンや石窯ピザは単純に家だとコストがかかりすぎるため、おとなしく外食で済ませるが吉。趣味の場合は別。
    レシピをストックする
    たまたま目に入った、バズっていた、そういう理由でいいので気になるレシピは控えておく。友達など周りの人に聞いてみるのもよろしい。

    献立の考え方

    基本的には主菜から決める。スーパーで安くて質のいい肉や魚を見繕い、味付けや組み合わせを考えて副菜や汁物を想像しながら野菜やその他食材を買う。 旬だったり単に食べたかったりなど、使いたい食材やメニューがある場合はそれを中心に考える。

    レシピの改良

    作ったものは食べて評価し、次回から変えたい点があれば具体的に記録しておく。

    スパイスや香草をうまく使う

    夏場など、食欲が落ちるときは特に有効。 カレーやニラ、青紫蘇を活用しよう。
    補足:香りが大切なものの扱い
    お茶や鷹の爪等は密閉して保管する。

    にんにくや生姜の作用

    おいしいだけでなく、身体が温まったり元気が出るなどと感じたことはないだろうか。目的によって効果的に使うと食が進む。

    大量に作る時は

    特に水分について、レシピの数倍の量を作りたくても単純に増量してはいけない。大きい鍋などでたくさん作る時と小さい鍋でレシピ通りに作る時とでは、野菜から出る水分やそれの蒸発量、適切な火力などがどうしても変わってきてしまう。調整しながら作ってみよう。

    さらに美味しく作るために

    下拵えの意味を考える。トマトの湯むき、油揚げの油抜き、豆腐の水切り、魚の霜降り、一見すると意味がないように思えたとしても全てに理由がある。せっかく時間とお金をかけて料理するなら、ひと手間を怠らず更においしくしよう。

    お弁当について

  • 大きいものから詰め、小さいものや形を変えられるもので隙間を埋める。
  • 味付けはやや濃いめを意識する。
  • 美味しさを追求するならお米は朝炊いて、詰めたら保冷剤できちんと冷やしてから蓋を閉め持っていく。
  • 特に夏場は傷ませない工夫を凝らす。炊飯のときお酢を大さじ1入れてから炊く、お弁当の蓋にお酢をスプレーする、梅干しを入れる等。作り置きのおかずを使う場合は必ずレンジ等で加熱してから詰める。
  • 生野菜は入れない。ミニトマトなどは、どうしても入れたいならば必ずヘタを取り除く。
  • 半熟卵が好きでも、お弁当のときはきちんと火を通すべし。
  • お弁当用のご飯を炊く時は粉ゼラチンを入れると時間が経っても水分が抜けづらく、美味しさが長持ちする。2-3合に対して2.5g程度で十分。
  • ご飯とおかずを1段のお弁当に詰めるなら、ご飯を少し斜めに詰めると見栄えがしやすい。基本的にはお米に汁気があると傷みやすくなるため推奨はしない。

    おわりに

  • 自分で料理をすると、作ってもらうことの有り難みがわかる。
  • 未知のものはまず食べてみる。材料を観察し、作り方等を聞いてみると世界が広がるかも。
  • 段階を踏もう。レンジ調理で済むものから始めて、テクニカルなものには最初は手を出さないでおくことが自信を失わずに長く続けるコツ。
  • ここまで読めたなら絶対にできる。まずはやってみよう。